ロッド製作の手順
Trolling heads manufacturing procedure
オリジナルロッドの作り方は様々です。 性能重視なのかデザイン重視なのか工法もまちまち。 欲を言えば切りが無く、材料、道具にお金がかかるもの。もちろん時間も。このページは、<最低の材料/道具/時間でオリジナルロッドを作ろう>そんなあなた向けの「標準的製作マニュアルページ」です。沖釣り用1ピースロッドを例にしています。では順じ見てみましょう
①道具・材料の準備
Preparing tools and materials
はじめに 材料と道具をそろえましょう。材料・道具ともに「これで無ければいけない!」ということはありません。特にこだわりが無ければ、代用品を使うと節約できるものもあります。
材料
① ブランク
竿本体の素材のことです。オールグラス/ハイパーグラス/カーボンチュウブラなどなど 目的に合ったブランクを選んでください。
・Aグラス=もっとも柔らかいグラス素材(削りは容易にできる)
・Bグラス=やや硬めのグラス素材(やや硬いが削りはできる)
・硬質グラス=もっとも硬めのグラス素材(かなり硬いが削りはできる)
・カーボン素材=カーボン素材(圧縮により強さが異なり、削りはできる)
注) 無垢素材の場合は削って調子を変えることができますが、パイプ素材の場合は、削りはできないとお考え下さい。
② ガイド
ブランクの長さ・調子・使用目的に応じてサイズや数を選んでください。
③ ラッピングスレッド
デザインに沿って 仕上げたい色合いのスレッドを全て揃えてください。
④ バットパイプ
ブランクにあった寸法/強度のものが必要です。
⑤ 前グリップ (EVAグリップが一般的)
・バットパイプに装着の場合=バットパイプの外径とグリップ内径が同じか若干大きめ
・ブランクに装着の場合=ブランク外径と同じかグリップ内径が同じか若干大きめ
⑥ パイプシート(リールシート)
普段使うリールが装着できるサイズで、バットパイプに装着出来る寸法のもの
⑦ 後グリップ EVA
バットパイプに装着の場合は バットパイプの外径とグリップの内径が同じかそれに近いもの。
⑧ バットキャップ
バットパイプに装着できればよいので、釣り具でなくても 代用できるキャップであれば良い。
⑨ 塗料
アクリル系塗料・ウレタン系塗料などのスプレータイプ
⑩ 洗浄液
塗料に合った洗浄液
⑪ エポキシコーティング剤+薄め液
釣具屋さんで売っている (デュラグロスなど)
⑫ 瞬間接着剤
ホームセンター・百均などで売っているもので十分です。
⑬ エポキシ接着剤
ホームセンターなどで売っているもので十分です。 30分硬化型くらいが使いやすいでしょう。
⑭ ロッドドライヤー
お金はかけたくなくてもロッドドライヤーが無いと綺麗にできません。
⑮ カッター
文房具コーナーの一般的なもので大丈夫です。
⑯ 筆
耐油性の幅1cm前後のも と 幅2cm前後の2種類あるとよいです。
⑰ 計量シリング
エポキシコーティング剤をある程度正確に測れればなんでもいいです。
⑱ マスキングテープ
ホームセンターなどで売っているもので結構です
⑲ 耐水サンドペーパー
320番・600番・1500番くらいであればなんでもよい。
⑳ せき糸
隙間調整用の糸です。必要ない場合もあります。
* 工夫次第で省けるものもあります。
②バットの製作
Bat making
材料が揃ったところで、まずは、バット(持ち手)部分の製作をしましょう。 リールの取り付け部分でもありますから、しっかりとした作りにしましょう。
① バットの仮組み
接着してよいかの確認します。
仮組みしたときに、おのおののパーツの接合部の固さを 確認してください。あまり固すぎて もゆるすぎても、良くありません。固すぎる場合、ペーパー等で削り調整してください。ゆる過ぎる場合は、マスキングテープやセキ糸などを使って調節します。
② 接着
エポキシ接着剤を使って接着します。(前グリップ/リールシート/後グリップ/バットキャップ)
はみ出た接着剤は エポキシ薄め液で拭き取るときれいに取れます。
=留意点=
バットパイプにEVAグリップやリールシートを接着する場合、ちょうど良い固さでセキ糸などを巻かなくても良い状態であっても、サンドペーパー320番手くらいで、パイプ表面に キズをつけるなどして 凹凸を作ったほうが、より接合が強固になります。
③ブランクの塗装
Blank production
ブランク(竿素材)の塗装です。ここから大事な部分です。手間を惜しまず 出来る限り丁寧に。
① バット・フロントグリップとの仮組み
まず ブランクにフロントグリップをはめます。次にバットパイプにブランクを差し込みます。
フロントグリップの先端が、埋め込み位置になります。印をつけます。
印(埋め込み部分の境目)より、内側に5mm~10cmくらい入ったところにもう一度印をしてください。 (この印までを塗装することになります 最初の印は取ってください)
重要) 何cmあるいは何mm内側に印を入れたかを覚えておいてください。
② ペーパーがけ
ブランクのトップガイド側から赤線までを、320番~600番くらいのサンドペーパーでペーパー掛けします。
③ 洗浄
ペーパー掛けが終わったら、薄い石鹸水などでよく洗います。 研磨した粉や油分をとってください。市販のシンナーやシリコンオフなど使ってもかまいません。安く済ませるなら石鹸水で十分です。 ただ最後に石鹸水は完璧に洗い流してください。お湯で流すと良いです。
④ 乾燥
綺麗な布でサッと拭いて あとは干して水分を十分飛ばしてください。
⑤ 下塗り
アクリル系塗料で 同一方向にスプレーを繰り返し 全体をムラ無くサッと塗ります。
下地なので サーフェサー(下地剤)の方が良いですが、色によってはムラが出やすいので、使う場合には注意が必要です。
⑥ 乾燥
完全に乾かしてください。夏場で1日、冬で3日くらい。
⑦ ペーパーがけ
600番くらいで軽くかけ、塗りムラやホコリなど乗ったところの凹凸などをならしてください。
⑧ 洗浄
ペーパー掛けが終わったら、薄い石鹸水などでよく洗う研磨した粉や油分をとってください。 市販の シンナーやシリコンオフなど使ってもかまいません。 安く済ませるなら石鹸水で十分です。 最後 石鹸水は完璧に洗い流してください。
⑨ 乾燥
綺麗な布でサッと拭いて あとは干して水分を十分飛ばしてください。
⑩ 上塗り
アクリル系塗料全体をムラ無くサッと塗ります。
⑪ 乾燥
夏場で1日、冬で3日くらい
⑫ 仕上げ塗り
上塗りの状態が良ければ、仕上げに入りますが、凹凸や色ムラがある場合は、再度ペーパー掛けと塗装を行ってください。
アクリル系塗料をある程度の厚みをもたせムラ無く全体を塗ります。
エポキシコーティングをする場合、最後にクリア塗装をする必要はありませんが、コーティング無しの場合は、クリア塗装をした方がきれいに仕上がります。
⑬ 乾燥
完全に硬化するまで乾燥させてください。
=留意点=
塗装回数は好みですが、あまり厚塗りしすぎると、感度が落ちたり、塗装に割れが入りやすくなったりしますので注意してください。最終塗装が一番肝心なので、最終塗装時には慎重に、気合を入れてムラ無く塗って下さい。
④ガイド巻き
Guides winding
ガイドリングでセンターを合わせるのがコツです。センターを合わせて、しっかりと巻いてください。
① topガイドの接着
ブランクには表裏があります。まず 強い面・弱い面を確認します・・・。グラス無垢素材の沖釣りロッドの場合は 体感できるほどの影響は出ないので あまり気にしなくても構わないと思いますが、強い方向を使っていきます。
↓図のように 床にブランクを押し当て 回してみます。
すると 360度回すと 反発の弱い面と強い面が交互に感じられます。ハッキリと一番強い方向が分かるようなら、ブランクの根元に その位置の印を入れます。
よくわからない場合は、弱い部分(曲げやすい部分)を見つけて印をつけ、90度横方向が強い面になります。
今回は沖釣りロッドなので(ベイトロッドなので) 印の入った側にガイドを取り付けていきます。瞬間接着剤 または エポキシ接着剤などで、トップガイドを接着します。先径が細いものなら瞬間で、太いものはエポキシで接着するほうが無難でしょう。
② ガイドの仮止め
トップガイドの向きで他のガイドをマスキングテープなどで仮留めしていきます。
この時点では 仮止め位置は目見当でよいので、大体この辺りだな・・・と思われるところに 先端から留めていってください。
③ ガイド仮止め位置の調整
ガイドに糸を通して軽い錘などぶら下げておきます(仮留めがが取れないように)。
ブランクの先端をもってブランクを手で曲げてみます。
先端から修正していきます。
曲げ方を変えながら、ガイド間の糸がブランクにあたらない位置で、ガイド間隔が最も長い位置を見つけていきます。 先端から順じ仮留めの位置を調整します。
④ 印入れ(ガイド位置決め)
位置修正が終わったら、ガイドの足がくる部分や リングの位置などを (付ける位置は自分で決めてください) マジック等で 小さく(薄く)つけください。
⑤ 分解
バット・フロントグリップ・ガイドを取はずします。
⑥ ガイド下巻き
下巻きは ガイドのすべり防止になりますが、負荷の少ない小物用のロッドや 軽量化が必要なルアーロッドなどには、下巻きは無くてもよいでしょう。ブランク先端から順じ巻いてください。ここでは下巻作業は省略します。
⑦ ガイド上巻き
ブランク先端から順じ巻いていきます。リングの位置が まっすぐ揃うように 常に確認しながら 一つずつ巻いていきます。 ホットグルーなど使って仮押さえするとガイド巻きがはかどりますが、無くても十分いけます。
ガイドを印に合わせ、ガイドの足の片側にマスキングを巻きます。
ブランク元側からリングを除いて位置を微修正します。
この部分に巻きます↓
巻き方は↓
ガイドの両端が巻けたら、次のガイドも同様に巻いていきます。
=留意点=
ガイドの仮止めの時に 塗装に強い衝撃など与えますと、塗装が剥がれる場合がありますから十分注意してください。
スレッドの種類によっては、印が浮き出て 見えてしまうものがありますので、 印は出来る限り薄く小さくしてください。
スレッドは、隙間が空かないように詰めながら巻いてください。
⑤コーティング
coating
竿の表面のコーティングです。数回繰り返すときれいに仕上がります。手間暇かかりますが、がんばってください。
① ロッドのふき取り
ティッシュや布で、巻きの無い部分の油分など十分にふき取ってください。シリコンオフなど使うと密着度が増します。
② コーティング1回目
ブランクをロッドドライヤーにセットします。きます。
規定量のエポキシ樹脂を カップに取り よく混ぜ合わせます。 出来るだけ泡が立たないように混ぜていってください。 樹脂が硬い場合は、薄め液を入れてください。薄め液の量は規定量以内にとどめてください。
まずはガイドの巻の部分から塗っていき、全ての巻の部分を塗り終えたら、全体に薄めにさっと塗って下さい。ロッドドライヤーで回転させながら、ブランクの太い方から細い方へ同一方向で塗っていきます。
③ 乾燥
自然硬化させる場合は目安として 夏場2日・冬場4日くらいです。エポキシ樹脂は、室温で完全硬化時間が変わります。
④ ペーパーがけ
320番くらいで大まかな凹凸の除去をしてください。この時点では ごく軽くあたってください。深く削って完全に平らにする必要はありません。同じところを何度も削って、塗装まで削らないように注意してください。
⑤ 糸巻き部の手入れ
巻き部にはみ出た糸があると、エポキシ樹脂が”とんがった山”になります。 カッターで”とんがり山”をカットしてください。巻の部分まで切らないように注意してください。
⑥ 洗浄
既に全体がコーティングされているので、水洗いしても大丈夫です。薄い石鹸水などでよく洗ってください。研磨した粉や油分をとります。石鹸水など使った場合は、ぬるま湯でよく洗い流してください。
⑦ 乾燥
洗った部分に指で直接触れることの無いよう、全体を綺麗な布で拭いてください。その後 水気を完全に乾かしてから次に進んでください。
⑧ コーティング2回目
1回目同様に エポキシ樹脂を全体に薄めにさっと塗って下さい。
⑨ 乾燥
1回目同様です。夏場2日冬場4日くらいです。
⑩ ペーパーがけ
2回目になると かなり凹凸も少なくなっているはずです。600番くらいで、細かな凹凸の除去を行ってください。
⑪ 洗浄
1回目同様です。薄い石鹸水などでよく洗う研磨した粉や油分をとってください。
⑫ 最終コーティング
エポキシ樹脂を若干厚めにムラ無く全体にかけます。今回はコーティング作業を3回で説明していますが、状態によって4回5回と繰り返してください。よりピカピカの仕上がりになります。
⑬ 乾燥
夏場2日 冬場4日くらいです。
⑭ ガイド最終コーティング
最後に エポキシ樹脂をガイドの縛り部のみ厚めに盛るようにかけます。 (ガイドの縛り部のみ 先にコーティングして 後から 全体をコーティングする方法もあります)
⑮ 乾燥
夏場2日冬場4日くらいです。
=留意点=
油分が大敵ですので、ふき取りは丹念にしたほうが後が楽です。塗布回数は好みですが、あまり厚塗りしすぎると、感度が落ちたりコーティングに割れが入りやすくなりますので注意してください。
最終コーティングが一番肝心なので、慎重に且つ気合を入れて、ムラ無く塗って下さい。
⑥バット・フロントグリップ・ブランクの接着
Bonding bat and blank
バット(持ち手)と ブランク を接着です。いよいよ最終の組み込みです。 ここまでくると、釣りをしている場面がチラついて、ワクワクしますぞ!
① バット/フロントグリップ/ブランクの仮組み
ブランクにフロントグリップ・バットをはめ込みます。接合部分の固さを確認します。隙間があり過ぎる場合は、せき糸を巻くなどして調節してください。
② 接着
ブランク側にエポキシ接着剤を塗り、棒などを使って フロントグリップの内側にも接着剤を塗り 埋め込み位置まで フロントグリップを差し込みます。
埋め込み位置は 塗装の始まりから 内側5mm~10mm内側です。(埋め込み位置より内側まで5mm~10mm余分に塗装しています)
はみ出た接着剤は拭き取ってください。エポキシ薄め液を使うと楽です。
接着剤が固まったら バット部も同様に接着します。ガイド位置と リールシート位置を合わせてください。
はみ出た接着剤は拭き取ってください。エポキシ薄め液を使うと楽です。
③ 全体の点検
全体の点検をして 特に問題がなければ 完成です お疲れさまでした!
エポキシの塗りムラや気になる凹凸が出た場合は、気になる部位のあるガイド間の一節全体を修繕してください。
=留意点=
リールシートの位置とガイドの位置を間違えないように接着して下さい
これですべての作業は終了です。お疲れさまでした。工夫次第で、材料・道具・作業は簡素化できるものもありますので、色々と試してみてください。